新・小杉散歩
2020.07.09
京濱伏見稲荷神社(京浜伏見稲荷神社)
新丸子駅から徒歩3分、武蔵小杉駅からも徒歩10分程度のところにある「京濱伏見稲荷神社」は、たくさんの可愛らしいおきつねさまがいることでSNSスポットとしても人気のある神社です。
こちらの「京濱伏見稲荷神社」は、昭和二十年から三十年頃に戦後の復興を祈念して建立された神社だそうです。
主祭神は「常盤稲荷大神(ときわいなりおおかみ)」。初代宮司である富澤冠受大人之命が受けた京都の伏見稲荷大社のご神示のもと、「万民豊楽(すべての人々が楽しく豊かであること)」と平和な毎日を守護されるよう、出世稲荷として鎮座されています。
御祭神は宇賀之御魂大神(産業興隆、商売繁盛の神)、大己貴命(国、家族の安全、医療の神)、猿田彦神(導引き、旅行、交通安全、地鎮の神)、大宮能女神(天宇受売命/学業、進学、芸能の神)、保食之神(大田之神/生活、進路、就職、出世向上の神)の「五成大明神(いなりだいみょうじん)」で、境内にはそのほかにいくつかの摂末社もあります。
様式は江戸造りと呼ばれるもので、その土台に霊峰富士山の溶岩を積むことが大変縁起のよいこととされ、こちらの神社でも本殿の周囲が富士山の溶岩が使われています。
もともと「稲荷大神」は、五穀を守る神様で、稲荷神社の総本宮である「伏見稲荷大社」は、京都の大飢饉の折りに朝廷が五穀豊穣、そして飢饉からの復興を祈念して建立されたのだそうです。 その後、五穀豊穣の意が広げられ、商売繁昌・産業興隆・家内安全・交通安全・芸能上達の守護神として信仰されるようになり、今もその信仰は続いています。 稲荷神社は全国に約3万社あるのだとか。確かに、誰もが身近に感じている信仰なのではないでしょうか。それだけご利益があるということなのかもしれません。
しかしいくらお稲荷さま多しと言えど、こちらの神社ほどおきつねさまが多いところは見たことがありません。とにかくたくさんのおきつねさまが所狭しと鎮座されているのですが、そのどれもが鎮座と言うにはあまりにも生き生きと躍動感があり、いまにも動き出しそうな風情なのです。おきつねさまたちは、それぞれにくつろいでいたり眠っていたりじゃれて遊んでいたり。表情も豊かで、ひとつも同じものがありません。
このおきつねさまは、すべて一人の作家さんが手彫りで彫られたものなのだそうです。
でも、どうしてこんなにたくさん…?
稲荷神社のおきつねさまは「稲荷大神」ではなく、「ご神使」です。よく神様だと勘違いされるそうですが、神様のお使いなんですね。人の願いを神様に伝えるお役目を担われているわけですから、人も願いも大いに増えた昨今は大忙しでしょう。
……と、いうわけでこちらでは、「たくさんの願い事が順番待ちをせずに神様に伝えられ叶えられるように」と、たくさんのご神使さまを祀られているのだとか。なんともユニークな話です。
「そもそもここの神様は賑やかなのが好きなんですよ。ですから参拝されるみなさんにも賑やかに楽しんでいただきたいんです」
そうおっしゃるご神職の笑顔に、やはり「身近な神様」を感じます。
賑やかに境内に集うおきつねさまの数は百八体。本当に百八体あるらしいのですが、この「百八」という数字には「無数の」という意味があって、つまりここには無数のご神使さまがおられる、ということなのだそうです。これはとても珍しく、おそらくこちらの神社だけなのではないかというお話でした。
武蔵小杉周辺の発展は、このおきつねさまが頑張って願いを届けてくれたからなのかもしれませんね。
境内には、本殿のほかにもたくさんの神殿があります。すべてはご紹介できませんが、いずれも丁寧な説明書きの案内板が建てられていて、興味深く読めるものでした。
余談ですが、こちらにはたくさんのおきつねさまに混ざって蛙くんが一匹。
なんとも愛らしい顔のこの蛙くんは「無事帰る」「瑞々しく生きる」という願いをこめて作られたそうです。そしてなんとこの蛙くん、実は生きていて日によって居場所を変えるのだとか。「今日はどこにいるのかな」と、ぜひ探してみてください。
※2020年7月現在、コロナウイルス感染拡大防止のため境内使用は参拝のみに限られています。また、御朱印は書き置き(紙に書いてあるものを渡す手法)のみなど、一部特別措置がとられています。
※神社の縁起や稲荷信仰については、神職の方にお話しいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
京濱伏見稲荷神社(京浜伏見稲荷神社)
中原区新丸子東2-980