新・小杉散歩
2018.05.15
小杉御殿町・築350年の蔵を再生「寺子屋 三左蔵」
小杉御殿町の中原街道沿い、小杉十字路と西明寺交差点を結ぶちょうど中間あたりに、2棟の蔵があるのをご存知ですか?
築350年ほどといわれる江戸の趣溢れるこの蔵は、フリースペース「寺子屋 三左蔵(さんざぐら)」 として、今年7月にオープンします。今回はそのプレオープンにお邪魔した模様をお伝えします。
御殿町の旧家である小林家の敷地内にあるこの2棟の蔵は、中原街道が宿場町として栄えていた江戸初期のものと推測されています。当時小林家が質屋(のちに呉服店)を営んでいたことから、1棟はその衣装蔵として、もう1棟は味噌蔵として利用されていました。蔵の名前は小林家が代々継承する「三左衛門」という名跡にちなんでいます。
長年使われることのなかったこれらの蔵を、再利用できるようにリノベーションしたのは、現在の当主である小林覚さん。専門家に調査を依頼したところ、基礎、梁、壁などのうち、多くの部分がそのまま残すことが可能とわかり、現在では数少なくない、寺社建築の技術を持つ棟梁を群馬は沼田市より招致。約3か月間の住み込みで改修工事が行われたということです。
蔵の内部は、メゾネット構造。メインスペースとなる衣装蔵の1階部分の天井には、立派な4本の梁が渡されています。
蔵の特性と、2階部分の床が格子状になっていることもあり、とても通気性がよく、湿度も安定。冷暖房で調節しなくても、心地よく過ごすことができるそうです。
隣接した味噌蔵も新たに息を吹き返しています。1階部分にキッチンやトイレ、洗面台を新設。
近代的にリフォームされた1階とは対照的に、2階にあたる屋根裏には、この味噌蔵に長い間収蔵されていた、江戸時代のものと思われる篭や木桶など、貴重な古道具が展示されていました。
貴重な文化財は、蔵の外部にも。アプローチに敷かれた御影石は、ノミ一本で削りながら平に仕上げる「ノミ切り仕上げ」という技法が用いられたもの。職人がいないため、現在ではほとんど生産されることがないといわれています。こちらも、小林家の敷地に遺されていました。
このほかにも、長梯子や巨木を縦切りにした檜のテーブルなど、珍しい江戸の古道具が状態よく保管され、実際に間近で見て触れることができます。
300年余りの時を超え、江戸時代と現代の職人による、鮮やかな技術の競演を垣間見ることができる「寺子屋 三左蔵」。その名のとおり現代版の寺子屋として、教室やワークショップ、勉強会など、学びを目的としたフリースペースとして、一般公開される予定です。
伝統と技術が継承された場での学びは、きっと特別な経験になるのではないでしょうか。
小杉の街の新たな発想とコミュニケーションを生み出すこの場所に、今後も目が離せません。
寺子屋 三左蔵
川崎市中原区小杉御殿町2-111
東横線/目黒線・新丸子駅より徒歩10分
JR南武線/東横線/目黒線・武蔵小杉駅より徒歩12分
JR南武線・武蔵中原駅より徒歩15分
※駐車場は、主催者用の1台分のみ利用可能です。
※一般公開は7月予定です。(近日HPに利用申し込みフォーム設置)
※現在はプレオープン期間中につき、固有の電話番号はありません。上記HPよりメールにてお問い合わせください。
※小林家の歴史については、こちらのページもぜひご覧ください。
「中原街道と周辺の今昔」デジタルアーカイブ「質屋から呉服屋(小林家)」